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東京高等裁判所 昭和53年(く)178号 決定 1978年7月05日

少年 R・T(昭三六・一〇・一〇生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の理由は、少年が作成した抗告申立書記載のとおりであるが、その要旨は、原裁判所が少年に対し中等少年院送致の処分をしたのは著しく不当であるという趣旨のものである。

そこで記録を詳しく調べて検討すると、少年は昭和五二年四月○○工業高校定時制に入学し、昼間は○○鉄工の工員として働いていたが、仕事がつらいという理由でそこをやめ、同年九月ころには学校も中退して家でぶらぶらしているうち、同年八月三〇日から一一月一日までの間に本件窃盗、住居侵入未遂、有印私文書偽造、同行使、詐欺の非行を犯し、右事件について東京家庭裁判所が調査中に本件虞犯の非行事実があつたものである。そうして、本件各非行の態様、少年の性格、交遊関係、保護者の保護能力等を考えると、少年の健全な育成のためには施設に収容して矯正教育を受けさせ、また生活環境の調整をはかることが必要であると考えられる。少年は、「原裁判所で調査を受けたとき、店から金をとつたことがわかり、少年鑑別所に行つて反省するように言われたが、店の金を盗んだのは初めて家庭裁判所に呼ばれる前のことであるから、そのような理由で観護措置をしたり、少年院に送致するのは不当である」という意味の主張をしている。しかし、本件観護措置は前記の虞犯事件についてとられたもので、特定の窃盗の事実によるものではないことが明らかである。そうして、少年が店から金をとつたというのは、昭和五三年四月一二日当時少年が店員として勤めていた○○ずし○○店の売上金一万円を盗んだことを指すものと思われるが、このことは少年が家庭裁判所調査官に対して述べていることで、調査官が少年に面接して調査した翌日の出来ごとであり、原決定がこれを少年の非行性を認める上での一資料としたことは不当とはいえない。以上のような理由により、少年が現在反省し、まじめに働くつもりでいることなど、申立書に述べられている点をも含めて、少年に有利な事情をよく考えてみても、原決定が少年を中等少年院に送致した保護処分はやむをえないもので、著しく不当であるとは認められない。

よつて少年法三三条一項後段により本件抗告を棄却することとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小野慶二 裁判官 斉藤昭 小泉祐康)

参考一 抗告申立書

抗告の趣旨

僕は、審判のけつか中等少年院とけつてい、いたしましたが僕は、ふまんです。僕がはじめて家庭裁判所によびだされたとき、もうこんごやらなければよいといわれて、まじめに仕事していましたが、やになつて仕事をやめたとき二、三日むだんがいはくをして家に帰つたら、店でお金なくなつたとゆわれしらないとゆつたら二月に家庭裁判所からよばれたとき前に店からお金とつたことがばれて、そのことで鑑別所に反省にいつてきなさいとゆわれましたがよく考えてみたら、店からお金をとつたのは、はじめて家庭裁判所によばれる前にやつたのですけど、お父さんが、それをしたのがあとだつたのでまたやつてしまつたと思つているみたいですからこのことはかんけいないと思います。それと生活めんは、少年院にいくからなおるとゆうわけではないと思います。そこにいつてなおるのなら、家でお父さんたちにゆつくりおそわつたほうがねつしんにおぼえると考えています、裁判官もういちど考えて、しやばにかえして下さい、おねがいいたします。まじめにできますから。以上

〔参考三〕 少年調査票(抄)<省略>

〔参考四〕 鑑別結果通知書<省略>

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